やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

 もし、あの時。
 モンドが車の運転手で教会に同行していたら。
 リアンはあんな目に遭わなかったと思う。
 モンドは身体が大きくて、周囲を威圧出来た。

 そう考えて、改めて思い出した。
 2年程前からリアンの学校の行き帰りにモンドが付いていること。
 領主夫妻に手を出そうとしたあり得ない愚か者達。
 私は女だから見過ごされていたけれど、幼いリアンを舐めて、通学途中のあの子に汚い言葉を投げつけたりしていたのかも知れない。


「モンド、いつもありがとう。
 これからもリアンを、よろしくお願いしますね」


 モンドは何も口に出さず、帽子のヘリを少しあげて笑ってくれた。
 前回の私は本当に何も見えていなかった。



 今なら分かる。
 内に居たら気付かない丘の上の邸の歪み。
 これからは少しでも真っ直ぐになるように。
 建て直してみせる。


 邸の入口に到着して、私はモンドから手荷物を受け取った。
 たった1泊の里帰り。
 人に持って貰う程の大きさでも重さでもない。


 入口扉の前にはクリフォードとメイド長のカルディナが待っていてくれた。
 内心1週間で帰宅した私に戸惑っているだろうに、ふたりとも表情に出さないのはさすがだ。
< 207 / 444 >

この作品をシェア

pagetop