やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

22

 孤児院の食堂は、当然高等学院のそれよりも狭い。

 だが人間の心理は10歳でも18歳でも同じで、一番奥が落ち着くのか入口から遠い、所謂3年席に彼はこちらに背を向けて座っていた。
 猫背の背中が小刻みに揺れているのは、ビスケットを咀嚼しているからか。
 

 ここ、食堂に来るまで。
 どきどきし過ぎて、胸が痛かった。
 途中何人もの子供達とすれ違って、名前も呼ばれた気がしたのに、足は止まらなかった。
 止まりたくなかった。


 早く、早く!
 早くしないと、彼がまた無詠唱で何処かへ飛んでいってしまうかもしれない。
 早く、早く! と……


 食堂と書かれたプレートが扉の上部に貼られた部屋だった。
 一応ノックはしたが、返事を待たずに入室した。


 別に感動の再会を期待した訳じゃない。
 この年のオルは私のことなんか知らない。
 だから、私の顔を見て笑顔になる訳はない。
 モニカのような美少女だったら、もしかしたら一目惚れもあるかもしれないけれど。


 それでも、それでも。
 初めて会った時、彼はどんな顔をするのか楽しみにして……
 この頃の手持ちの洋服の中で、一番のお気に入りを着てきた私だったのだ。
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