やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 美しい人が美しく見えるのは、内側から輝いているからだ。
 心が美しいのが滲み出る、とかそんな意味じゃない。
 美しいこと以外の自信が現れている、とでも言えばいいのか。
 とにかく、目の前のオルからは訴えるものが何もなくて。
 いくら顔立ちが整っていても、何の印象も残らない子供だった。



 将来はあれ程綺麗な男性なのに。
 内側から自分の魅力をアピールして、泣く姿さえ美しかった。
 今のオルには、その片鱗もない。


 姿勢は悪くて、死んだ人のように光のない瞳はこちらをきちんと見ようとしない。
 ボソボソとしか話さず、あっちへ行けとばかりに、そこから拒否されたような感じ。



 だからと言って、私は直ぐに居なくならないよ。
 彼の向かい側の席に腰を下ろして、彼を真正面から見つめる。


「私はジェラルディン。
 モニカの従妹なの。
 これから毎月ここへ遊びに来るの。
 オルくん以外の子達にはもう挨拶したから。
 貴方にはまだ出来て無かったし、ここまで会いに来た」

「……」

「昼食出して貰えなかったの?」

「……出して貰えたけど……
 嫌いなもん出されたから」

「オルくん、嫌いなものあるの? 教えてよ」

「……トマト」
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