やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 父には領内の子供の魔力判定について、呉々もお願いしようと思った。
 オル程の魔力があれば暴走したら、孤児院周辺は吹き飛ぶかもしれない。


「貴方には特別な力があるの、私には見える」

「いい加減なこと、言って……
 あのさ……おねーさんのこと、俺は何て呼べばいいの?」

「皆ジェリー……、ディナって、呼んで」

「ディナ?」

「オルだけね、いつもはおねーさんで。
 ふたりきりの時だけ」


 制約がないだけに、やりたい放題の私だ。
 中身19歳の私が、まだ10歳のオルに、必死だな。
 オルにはディナと呼んで貰いたい、絶対に、だ。


 そこにクララが呼びにきてくれた。
 モンドのお迎えが来たみたい。


「じゃあ、帰るね、オルくん。
 また、来月来るよ」

 一応、レディ扱いしてくれているのか、オルも立ち上がって……
 いきなり、背伸びして私の首に軽く噛みついた。


 何が起こったのか。
 訳が分からない。


 忘れもしないあの日のように。
 視線を合わせたオルが唇を親指の腹で拭った。

 さすがにあの時程の色気はないが、それでも……


「ディナ、俺が吸血鬼だったら、どうする?」


 血なんか吸われていない。
 甘噛みされただけ。
 光の無かった、死んだ人の様だった瞳が、金色に光った気がした。


 初めて間近に見た10歳のオル。
 右目の目尻に小さな黒子を見つけた……
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