やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
そして今日この時間、ヒューゴさんは、ここに居た。
ヒューゴさんの正体を知っているのは、この店ではベイカーさんと厨房トップのカーニーさんだけ。
今日はカーニーさんの指示で受け取りに来た、とヒューゴさんはサイモンに説明をしていた。
「いつもはここで確認していただいて、前回の空箱を受け取って帰るんですけれど。
……おふたりじゃあ、あれなんで、中に運びましょうか?
この格好で厨房に入っていいのなら、ですけれど」
お年寄りだから運べないだろうと、とサイモンは気を遣っている。
下働きのヒューゴさんに対しても話し方は丁寧だ。
前回の無愛想シドニーに、こんな一面があったのは知らなかった。
そして、私の方を見て、ヒューゴさんに気付かれないように、顎をくいとあげて見せた。
厨房から誰か呼んでこい、と言いたいのだと分かるが、ここは鈍感な女で、サイモンのサインに知らん顔をする。
呼びに行ったって、ヒューゴさんから指示されているカーニーさんは誰も出さないのが分かっている。
私はヒューゴさんに『空箱を取ってきますね』と言って、その場を離れた。
祖父とサイモンの間に、どんな会話が交わされていたのかは知らない。
私が空箱を運んでいる間も。
更衣室から出て、裏口から帰った時も。
ふたりは話続けていた。
今夜、夕食後に電話をしたら。
どんな話をしたのか、教えて貰えるのだろうか?
私は祖父のように、割りきることが出来ない。
ヒューゴさんの正体を知っているのは、この店ではベイカーさんと厨房トップのカーニーさんだけ。
今日はカーニーさんの指示で受け取りに来た、とヒューゴさんはサイモンに説明をしていた。
「いつもはここで確認していただいて、前回の空箱を受け取って帰るんですけれど。
……おふたりじゃあ、あれなんで、中に運びましょうか?
この格好で厨房に入っていいのなら、ですけれど」
お年寄りだから運べないだろうと、とサイモンは気を遣っている。
下働きのヒューゴさんに対しても話し方は丁寧だ。
前回の無愛想シドニーに、こんな一面があったのは知らなかった。
そして、私の方を見て、ヒューゴさんに気付かれないように、顎をくいとあげて見せた。
厨房から誰か呼んでこい、と言いたいのだと分かるが、ここは鈍感な女で、サイモンのサインに知らん顔をする。
呼びに行ったって、ヒューゴさんから指示されているカーニーさんは誰も出さないのが分かっている。
私はヒューゴさんに『空箱を取ってきますね』と言って、その場を離れた。
祖父とサイモンの間に、どんな会話が交わされていたのかは知らない。
私が空箱を運んでいる間も。
更衣室から出て、裏口から帰った時も。
ふたりは話続けていた。
今夜、夕食後に電話をしたら。
どんな話をしたのか、教えて貰えるのだろうか?
私は祖父のように、割りきることが出来ない。