やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
12
お金さえ払えば、おじさんは許してくれるはずだ。
幼いパピーを巡っての、私とおじさんのやり取りを周囲の人達も聞いている。
ちょっとした見物なのか、足を止める人が増えてきて、こちらを面白そうに見ているのが分かった。
「に……いや、5個盗まれましてね、合計は30ルアで」
「ひでぇな、5個で30って、ぼったくってんじゃねぇ!」
おじさんの法外な金額申告に、周囲の誰かから野次が飛んだのが聞こえた。
おじさんはそちらに向かって中指を立てたが、私には卑屈な、それでいて馬鹿にしたような薄ら笑いを浮かべた。
「違う!」
見上げたパピーが必死で訴えようとするけれど、私は口許に人差し指を当てた。
いいの、分かってる。
だけど、もう時間をかけずに解決する方を優先しよう。
押し問答が長引けば見物人の誰かが、警察官を呼ぶだろう。
最初は、に、と言いかけていた。
本当は5個盗まれたんじゃなくて2個なんじゃないの?
そう言ってやりたかったけれど。
盗んだのは何個だったか、証明は出来ないのだから。
被害者であるおじさんの言い分を聞くしかない。
おまけにおじさんは私のことを、パンの適正価格もわからない世間知らずのバカ娘、と思っている。
パン1個が6ルアなんて、ぼったくり金額を吹っ掛けられているのも、分かっていた。
幼いパピーを巡っての、私とおじさんのやり取りを周囲の人達も聞いている。
ちょっとした見物なのか、足を止める人が増えてきて、こちらを面白そうに見ているのが分かった。
「に……いや、5個盗まれましてね、合計は30ルアで」
「ひでぇな、5個で30って、ぼったくってんじゃねぇ!」
おじさんの法外な金額申告に、周囲の誰かから野次が飛んだのが聞こえた。
おじさんはそちらに向かって中指を立てたが、私には卑屈な、それでいて馬鹿にしたような薄ら笑いを浮かべた。
「違う!」
見上げたパピーが必死で訴えようとするけれど、私は口許に人差し指を当てた。
いいの、分かってる。
だけど、もう時間をかけずに解決する方を優先しよう。
押し問答が長引けば見物人の誰かが、警察官を呼ぶだろう。
最初は、に、と言いかけていた。
本当は5個盗まれたんじゃなくて2個なんじゃないの?
そう言ってやりたかったけれど。
盗んだのは何個だったか、証明は出来ないのだから。
被害者であるおじさんの言い分を聞くしかない。
おまけにおじさんは私のことを、パンの適正価格もわからない世間知らずのバカ娘、と思っている。
パン1個が6ルアなんて、ぼったくり金額を吹っ掛けられているのも、分かっていた。