やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「地元に、って……セントハーバーに戻ったってクララも死んだことになってて、籍は抹消されているし。
 クララもハイパーの籍に入れられているのなら、どこにも……」

「侯爵はサイモンにどう言ったのか分からんが、クララを自分の養女にする気はなくて、彼女の籍などどこにもない。
 クララは当時3歳で、5歳以下の子供の人権なんか、サイモン以外誰も気にしない」

「……兄のおまけで連れてきて、放ったらかしですか……
 クララをクレイトンの孤児院に預けたことは話さなかったんですね?」

「完全に私を信用していないからな。
 大切な妹の居所までは話さんだろ。
 とにかく、妹と暮らせるように金を貯めている、と」


 あぁ、これは。
 祖父の弱い部分をサイモンは知らずに知らずに突いている。
 祖父は大叔父の大学の学費を朝から晩まで働いて、稼いだ人だ。
 兄弟系統の話をされると弱いのだ。


 それとなくクレイトンの果物の話から領地へ行ったことはあるか、と尋ねたら、何度も行ったことがあると領地を絶賛していたらしい。
 何度も行くのはクララに会いに行っているのだろうけれど、クレイトンを絶賛?


「バーナビーの親父があいつを気に入ってて、何度か一緒にクレイトンへ日帰りで連れて行ってたらしい。
 大学を卒業したら、商会に就職させるつもりだろうな。
 そこで農園で働く元孤児達が自分達が育ってきた環境を話すのを聞いて、クレイトン伯爵は凄い。
 あれだけ孤児院にお金をかけてくれる領主は居ない、とさ」
< 291 / 444 >

この作品をシェア

pagetop