やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 リアンは母のお惚気など聞きたくない期なので、苦笑いで誤魔化して。
 私は意外な父の過去を聞いて、また胸が痛くなる。


 母が惚気ているように、父が腕に覚えのある人だったなら。
 取り囲んだ領民に手を出せずにいて、その結果落ちていく息子の姿を見て。
 後からどれ程自分を責めていただろうか、と思ったからだ。

 私はふわふわしていた父しか知らないが、息子の車椅子を押す父は、もうのほほんとしていない気がした。



 デザートのアイスクリームを食べ終えて、誰よりも早くモニカが席を立とうとした。
 私が母を見て。
 母が頷いて、モニカに声を掛ける。


「モニカ、待って、お話があるの。
 ……貴女、あのお部屋、移ってくれないかしら?」


 ◇◇◇


 モニカは返事をせずに、ただ母の顔を見ているだけだ。
 聞こえていないのかと思った母が同じ台詞を繰り返した。
 それでようやく、モニカは私とリアンの方を確認するように見た。
 リアンは呆気に取られたように、母の顔を見ている。


「何度も言わなくても聞こえているわ。
 今、それを……
 叔父様の居ないところで言います?」

「……」


 母の表情が少しひきつったが、良かった、訂正の言葉は言わずに居てくれた。


「どうせ、ジェリーの入れ知恵でしょう?
 ……クリフォード! 早く来て!
  クリフォード!
 早く呼んでよ! ディナでもいいから!」
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