やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

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 モニカは驚くよりも、呆れたように言った。


「お父様の遺言書?
 何言ってるのよ、そんなものは無いのよ。
 あんたの……叔母様がクビにしたスティーブンスさんから聞いたの?
 それもこの私の部屋に?」

 スティーブンスさんは、母が契約解除をした元顧問弁護士だ。


「あの人は何も知らない。
 両親だって、今は知らない。
 発見されたのは貴女の部屋からだと聞いたの。
 つまり元は貴女のお母様の部屋だわ。
 伯父様がどこに隠したのかは分からない。
 そもそも隠したつもりはなくて、ただ、どこかに紛れ込んでいる可能性の方が高いと思う」

「……どうして誰も知らない遺言書がここにある、って分かるのよ?」

「今から3年後の19歳だった私を、今の16歳に戻した魔法士から聞いたの。
 当時の成人前の貴女がそれを証拠として、お父様に譲位を迫るからよ。
 認めないなら、出るとこ出て戦う、なんてね。
 貴女の味方についていたのは婚約者とその両親。
 彼等はクレイトン伯爵家に寄生するために貴女を利用しようとした。
 元々伯爵位なんて要らなかった両親はこれ幸いと、遺言書を本物だと認めて、貴女に喜んで譲るつもりで手続きを始めたの」
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