やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
『あー、あー、あー』と訴えてきたそうだ。
眠いのかと抱き上げて揺すったら、いつもご機嫌なモニカなのに、身体を反らして嫌々をして。
『じ、じ』『あー、あー』を何度も繰り返した。



 察した伯母とカルディナが客間に飛び込むと、出血した母が倒れていて、その横に母を見下ろした祖父が立っていたそうだ。
 慌てて駆け寄った伯母に、祖父は『構うな』とだけ告げて自室に籠った。

 カルディナがクリフォードを呼びに行ったが、父と伯父は二頭立て馬車で出掛けており、帰りを待てないと判断した伯母は当時もう1頭居た馬に跨がり、マクレガー医師の元に走った。


「妊娠中の叔母様が出血したのに、お祖父様が構うな、と言ったの?
 お母様が馬に跨がり?」

 拗ねたモニカが部屋に籠るのは、このジジイの遺伝ね、と言うのはやめた。


「お母様は、お父様がお祖父様に手を出しそうになった、と仰ったけれど、本当は手を出したんだと思うの。
 だから、伯父様は引き離すために外に連れ出したのよ。
 平民女のせいで息子から殴られて、お祖父様のプライドは粉々だったでしょうね。
 憎くて憎くて、お母様のことも、私のことも、このまま……って思っても不思議じゃない。
 それとね、伯母様は女子馬術競技の選手だったらしいよ」 
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