やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「……」

「今回はシドニー絡みの譲位じゃないから、ムーアとの取引は継続されて、このまま順調に領地経営は落ち着いていくと思う。
 法的、経理的なバックアップもあるし、天候次第で農産物に出来不出来があったり、不作の年もあったりするだろうけれど、それ程経営が下降することはない。
 後はここの自然を生かした観光客誘致にもっと力を入れて……何?」

「ジェリーこそ、クレイトンを継いだら?」

「……私には、なりたいものが見付かったから」


 前回は祖父の期待に応えようと、大学の学部も決めた。
 学費も家賃もお世話になって、シーズンズという人も羨む仕事も手に入れる未来を約束されていて。
 文句なんて言うべきじゃない、と思っていたし。
 ムーアの教育のお陰で、商売が好きだと思って……思い込んで。



「まさか、その、魔法士の妻になるのが夢です! なの?」

「……私は弁護士になりたいと思ってる」


 初めて言った、自分の夢。
 私の中にまだ芽生えたばかりの夢。
 法学部を目指すなら、今の2倍3倍の勉強をしなくては無理だ。
 入学して初めて蕾になる夢だ。
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