やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 誰かに見つかったら大変なのに、サイモンは配達の仕事は続けていた。
 バーナビー商会との契約は年内いっぱいだったので、終了までは続けたいと祖父に直談判して許可されたのだ。


 どうしてだ、ムーアの邸でおとなしくしていろ。
 そう言いたかった。



 配達の仕事を終えたサイモンが、私を裏口で待っていた。
 11月に入って、気温はぐんぐん下がり、17時過ぎると辺りは黄昏に包まれる。
 荷馬車に乗るのに手を差し出してくれたサイモンの指先が少し冷たくて、結構待ってくれていたのかな、と思った。


「指、冷たいな。
 行列係、風邪引かないか?」

 サイモンも私の手に触れて、同じ様に冷たく感じたようだ。


「11月はまだましだ、って先輩が言ってました。
 12月から3月が地獄だって」


 しかし、その地獄をお客様は並んでくださっている。
 あの時間をどうやって短縮出来るだろう。
 考えろ、考えろ……


「それより、先輩は何で仕事を続けてるんですか?
 誰かに見られたら、侯爵に伝わりますよ?」
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