やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「貴女はきっと美しい女性になりますよ」


 心にもないお世辞を言うのは、得意だった。
 平凡な茶色の髪と茶色の瞳。
 本人も分かっているように、とてもじゃないが人目を引く美人にはならないだろうな。


「私は美しくはなれないですね。
 でも、美しいものは好きなんです。
 貴方の瞳はとても綺麗で……赤く輝いていて、まるで……」

「ルビーのようだ、と? よく言われますよ」


 聞きあきた褒め言葉。
 馬鹿な女は、ガキの頃から馬鹿。




「ルビーというよりは、スピネルはご存じでしょうか?」

「……」

「一見、ルビーに間違えられてしまうのですが、ルビーは加熱しないと輝かないのですが、スピネルはそのままで。
 何も加工しなくても綺麗だし、傷もなかなか付けられない価値の高いものなんです。
 私は貴方の瞳はスピネルのようだと申し上げたかったのです」


 スピネルの色は赤だけじゃなくて、ピンクや青いのもあって。
 サファイアともよく間違えられる。


 奴等は俺をまがい物だ、と。
 本物と似て異なるものとして、この名前で呼んでいるのに。

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