やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 私はモニカを抱き締めて、ここには居ない……
 あのひとの名前を呼んだ。


「オル! オル! オルシアナス・ヴィオン!」



 もしそうなってしまうなら。

 死ぬ前に、最後に口にするのは。
 
 彼の名前にすると決めていた。







「だから! アレを呼んでも無駄だっ…… 」


 憎々しげに私を睨んだヨエルが、言葉の途中でぐにゃりと曲がったように見えた。
 周囲の空間が大きく歪んで、少し空気が熱くなって。



 この熱さに覚えがあった。


 あの時のことは、何ひとつ忘れていない。




「俺の名前を呼んで」

 
 だから、今際の際に私は貴方の名前を呼んだ。


 あの時、貴方は私の額に触れた。
 覚悟していたような衝撃はなく、ただ少し熱い様な空気に包まれたのを感じた。


 それは、今のこの空気だ。


 ただ、今回は。
 時戻しの時の様な静かさはなく、1拍遅れて衝撃が来た!

 全身に痺れが来て、思わずモニカから手を離した。
 彼女が私の側に倒れこんだ。



 そして、私は。
 抱かれると言うよりは引っ掴まれた様な勢いで誰かの腕の中に居た。


 誰かの、なんかじゃない。

 誰のか、分かっている。



 私を抱いていたのは、物凄く。

 物凄く激怒しているオルだった。

 

「感動の再会は後回しだ。
 先に、スピネルを殺す」

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