やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「ディナ、いい加減にしろよ。
 お前は直ぐに殺して貰えると思うなよ?」


 久しぶりに会えた恋人同士の会話に口を挟むヨエルに、腹が立つ。
 こいつは1年前に戻って、9歳のオルの耳を引き千切ると言った狂人だ。
 絶対に許さない。


 だけど、私にはそんな力は無いから。
 ここは素直にオルに任せる。

 背中を向けた私に、オルが声をかけてくれる。


「好きだよ、すごく好きだ。
 これはお別れの言葉じゃないから」



 それは、ヨエルの馬鹿にしたような笑い声にかき消されたりしない。


 今回は、はっきり聞こえた。

 
 ◇◇◇


 後ろ髪を引かれる思いで、外に出る。
 大丈夫、オルは絶対に負けない。
 魔法学院の天才、次期女王陛下の魔法士。
 一線を退いて、私欲に走る黒魔法士とは出来が違う!


 よろよろとよろめきながら、外に出た私とモニカに見知らぬひとがかけよって手を貸してくれる。
 私達を囲んだ向こうに、じぃじとサイモンの顔が見えて、それが滲んで見えた。


 怖かった、本当は怖かった。
 あんな頭のおかしい男とずっと居て、私もおかしくなりそうだった。


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