やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

 彼等のような子供がこれから少しでも減るように。
 法的に子供の人権を守れないかと思ったのだ。




「3年前に会った方の影響が大きいんです」

「……」

「私より10歳以上年上の男性なんですけれど。
 その方は幼い頃にお父様と家庭教師から、愛の鞭と称して、掌と脹ら脛に虐待を受けていました」


 私の言葉を聞いて、フィリップスさんは皮肉げに笑った。


「どういう人間か想像はつきますよ?
 その男は多分、まともには育っていなかったでしょう?
 自分も同じことをしてしまうのではないか、と恐れて結婚も出来なくて。
 それか、既に我が子に暴力を振るっていましたか?
 貴女はそれを見て、こんな最低な人間を増やしてはならないと決心した?」

「いいえ、反対に。
 その方は背中に鞭を受けて出血していた浮浪児を、肌寒い夜だったのに、ご自分のコートを脱いでくるんで、汚れるのも構わずにずっと抱いていたんです。
 私はそのひとのようになりたい。
 青臭い理想ばっかり語るな、と大学でも嗤われました。
 実家に余裕があるから、お嬢さんの道楽だろう、とも。
 それでも……大きな事務所を辞められた先生だから。
 使い走りでも、下調べでも、何でもします。
 無給で構いません、勉強させてください」

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