やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 車のトランクには伯爵家の紋章を焼き入れた木箱と、ジャムやフルーツソースを積んで、好きな時に好きな場所へ走らせている。
 そのソースを開発したのはマーサだ。
 ふたりは従姉妹にはならなかったけれど、商品開発の相棒としてタッグを組んでいる。


 因みにモニカは、譲位の手続きで知り合ったフィリップスさんに一目惚れして、人生のタッグを組みたがっているのだが、真剣に取り合ってくれない、といつも嘆いている。

 
 ◇◇◇


 そして、私の方は、と言うと。
 一度だけ……22歳の頃、我慢出来なくて。
 魔法学院創立100周年記念パレードを観に行った。


 ドアガールの指導係になっていたメリッサからはクリスタルホテルから観よう、と誘われた。
 それは全体を頭上から観る分には良いのだけれど、私は同じ目線で彼を観たかった。

 それ故、日曜の午後2時からのパレードに午前6時から場所取りをした。
 恋する女は一途で少し頭がおかしい。


 そんな愚行には、モニカもマーサもクララも付き合ってはくれなくて
(彼女達はメリッサのお誘いを喜んで受けて、ホテルの会議室から、を選んだ)
 私はたったひとりで、熱心な魔法学院ファンの真ん中にその身を置いた。

< 420 / 444 >

この作品をシェア

pagetop