やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
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「私以外の皆が、幸せで。
それが嬉しいはずなのに。
私だけが取り残されている。
そんな気がするんです」
24歳の5月。
一昨年、司法試験の予備試験に合格するまでは、表向き順調だった。
しかし、去年司法試験本番で……落ちた。
2回目の試験が来月に迫ってきて、日々死に物狂いで勉強しているのだが、鬼気迫る私の様子に一度落ち着け、とフィリップスさんがランチに誘ってくれて。
私はフィリップスさんを相手に、愚痴り始めた。
「そんな風に思い始めたきっかけは何かあったんですか?」
本当は私の愚痴等聞きたくもなかろうに。
口では自分は冷めた人間だ、と言いながら。
本当は面倒見の良いフィリップスさんが話すように促してくれる。
「先週、クレイトンのマーサからベンと結婚すると連絡がありまして、おめでとう、と言えたのは言えたんですけれど」
ベンはクレイトン循環オムニバスの運転手になっていた。
同じ孤児院出身のふたりと各自1台ずつ自分でバスを購入して(祖父に借金して)3人で3台のバスを領内巡回する、バス会社を立ち上げたのだ。