やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「ベンくんは、あれでしょう。
初めて王都に来た時に、王都内全ルートの2階建てオムニバスに乗りたい、と制覇した強者でしたね」
その通り、初めて王都にやって来た15歳のベンから王都では何がお薦めか、と聞かれた私が
『2階建てオムニバスが最高だ』と答えたので。
到着したセントラル駅から早速乗り込んだ彼は、その素晴らしさに感動して。
3日間、下車せずにオムニバスの2階から名所を眺めて、全ルートを制覇した。
「それから、次は従兄のフレディです」
「あぁフレデリックくん、貴女のご友人の……
ジョーンズ嬢と、でしたね」
それは最初から分かっていたことだった。
フレディがドアマンの仕事を始めた時から、彼がメリッサを好きになることは読めていた。
何故なら、メリッサはムーアの人間が好むタイプの女性で、フレディは典型的なムーアの男だから。
フレディからは、メリッサが逃げられなくなるまで(こんな恐ろしい言葉が存在する?)
自分の正体は絶対にバラすな、とお願いされ。
メリッサからは、同僚のフレディ・グラントの優しさ(!)エピソードを聞くたびに、顔がひきつった。
そして2日前、ゲストリレーションズマネージャーに任命されたフレディは、アシスタントのメリッサに正体を隠したままプロポーズをして、受けて貰ったのだが。