やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 あのクソババア、って……隣で何かオルに話していたヴィオン師匠のことだよね?


「私が居たの、気付いてくれてたの?」

「当たり前でしょ、俺、犬並みに鼻が利くから。
 でも、見たら抑え利かなくなるから、見ないようにしてた」

「私、朝の6時から8時間も並んで……」


 あの人混みの中でも気付いてくれていたことが嬉しくて、馬鹿みたいに甘えるように文句を言った。
 どうしよう、嬉し過ぎて、どういう返しをしたらいいのか、分からない……


「8時間も並んでくれたのに2列目だったの?
 くそ、やっぱり、あの時言うこと聞くんじゃなかったな」


 そう言いながら、オルは立ち上がり。
 フードを脱いで、眼鏡を外した。


「えー、改めまして、ご挨拶させていただきます。
 モニカお嬢様、お久し振りです。
 8割増しの美男子に見える魔法を掛けたオルです。
 あー、そっちのマーサ姉ちゃん、あの頃はよくお世話をおかけしました。
 あの暗かったオルです。
 他の方も……いつもディナと仲良くしてくださって、ありがとうございます」


 最後は私の保護者のような挨拶だ。
 簡単すぎる女なので、それが嬉しい。
 ごめんね、モニカ。
 貴女との『ひとりでも楽しいね同盟』は今夜で脱退します。


 私達の会話を固まって見守っていた4人が、ようやく笑顔になって、会釈した。

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