やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「何かね、火加減と言うものが、私には理解出来ていなくて。
唯一、時間を計ればどうにかなる茹で卵は、どうにか、どうにか作れるようになりました……」
「え、嬉しいよ!
俺は卵料理の中でも、茹で卵が一番好きなんだ」
それは嘘だ。
オルが一番好きなのは、溶けるチーズを混ぜた半熟のスクランブルエッグだ。
あのパレードの待ち時間、周囲のファンの方々から私が得た情報ではそうだった。
それで、何度も何度も練習した。
「あのね、余熱、って!
何度も言わせないでね!」
フライパンの中の卵をかき混ぜながら、指導教官マーサに注意されながら。
半熟で火を止める加減が分からなくて。
何度も何度も、固まったチーズが混ざった炒り卵を完成させた。
「じゃあ、トマトの煮込みと茹で卵は、ディナの担当。
その他は俺が担当でいいよね?」
「……いや、これからもレパートリー増やせるように努力を重ね……っ!」
繋いでいた手を持ち上げて、オルが私の手の甲に、キスをしたので。
話してる途中なのに、思わずびくっとなる。