やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
『来週なら午前中は、ここに居ますから』

 彼はこのカフェの常連さんで、平日の午前中はここで過ごしているのだろうか。

 嘘なのかもしれないが、現在は無職だと言っていた。
 もし、それが本当なら、随分余裕のあるひとだ。


 何の連絡もせずに、コートのクリーニングが仕上がった水曜日に返却したらいいの?
 しかし、お金が絡んでいるのだから、約束した日に顔を出さないのは、人間的にどうだろうか? 

 やはり宣言通りに月曜日に先にお金だけを返しに行き、2日後の水曜にコートを返しに行く?
 けれどそんなことをしたら、1週間に2回も私に貴重な時間を取られた、と。
 あのひとは、そう思わないかな…


 それに、私の知らないところで、キャブの料金の支払いと、部屋の前までの見送りを運転手に頼んでくれた。
 それも出していただく理由がないお金だから、返したい。

 頑なに運賃を返すよりも何か御礼の品を用意した方がいいのでは?
 
 だけど、今は無職だと言っていたけれど、お金をかけた名刺を持っていて、着ている服もそれなりだったようなのに、あのコートが汚れるのを、あのひとは少しも気にしていなかった。 

 そんな経済的に恵まれていそうなひとに、何をプレゼントしたら?


 私は延々とオーウェン・フィリップスのことを考えて。

 どうしたらいいのか、困ってしまったのだった。
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