やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 私があの子から離れがたかったのは、頼ってくれたのが嬉しかったんだ。
 頼ってくれる小さな存在があったから、ボロボロになっていたのに最低な夜を乗り切れた。
 パピーに必要とされているから、頑張らなきゃ、と……

 そんなパピーさえ、本物じゃなかった。
 もう勘弁して。
 もうひとりにして。


「だってぇ、お金だって持ってないしぃ。
 ここじゃ、頼れる人はディナとぉ、後はあの優しいお兄さんだけよね?」

「……」

「ディナに追い出されたら、あの、フィリップス。
 オーウェンだよね、すごくいい匂いのする男。
 あの人に頼るしかないのよねぇ」


 魔女がフィリップスさんの名前を出したので、驚いた。
 パピーだった彼女は、彼にずっと抱かれていてほぼ眠っていた。

 フィリップスさんと話をしていたのは私だけだったはず。
 第一、彼は自分の名前を名乗らなかった。
 名刺を渡してきただけなのに。
 パピーはいつ彼の名刺を見たの?


「ここを追い出されたら、あたしオーウェンのところに行くわよ?
 あの人優しいから、すっごく親身になってくれると思うの。
 ディナ、それで良いのぉ?
 あたしをあの人に近付けてもいいのぉ?」
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