やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 パピーの時には気付かなかった。
 シアの時には無かった。
 彼の右目目尻に小さな黒子がある。
 わたしは震える左手の人差し指で、その黒子に触れた。



「ディナは……やっぱりこの顔好き?
 どうぞ、もっと触って?
 オルは鑑賞するのにいいけれど、と最初からディナは俺によく言ってたよね。
 だから、俺を鑑賞するだけじゃない愛玩用のペットにして、と何度も頼んだ」


 それは私の知らない、10年後の私との思い出でしょう、と。

 ぞくぞくするくらい腰にくる声で、耳と言うより首筋の辺りで囁かれたら……
 言い返せない。



 美しい男性には見慣れている、と思っていた。
 シドニー・ハイパーは無愛想だけれど女性からは人気がある容姿をしていて。
 昨日知り合ったオーウェン・フィリップスは硬質の男性美と同時に柔らかさを持った大人の魅力があった。
 身内の贔屓目でも、今でも父は外見はシュッとしてて、若々しい。
 弟のフロリアンだって、綺麗な少年だ。
 だけど、こんな……
< 83 / 444 >

この作品をシェア

pagetop