やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 彼が私に口付けて、その手が寝間着のボタンを外し始めて、少しずつ口付けが長くなってきて……

 広げられた合わせめから入れられた手が。
 5本の指が各々別の生き物のように動きながら、肌の上を移動していく。
 まるで大切なものを愛でるかのように優しく触れるから、彼の想いが指先から伝わってきて、涙が出そうになる。

 このひとはいつもこんな風に、丁寧に私を愛していたの?
 初めてなのに、こんなの、こんなの。 


 優しいのに意地悪をする舌や指先に翻弄されて、
 愛しさの波に呑まれて、
 甘い海底に沈められそうになって、
 そこで我に返った。

 ……ちょっとぉ、待て! このままでは溺れてしまう!


「ま、まって、待って!」

 深く舌を絡ませ出したキスの合間に、息も絶え絶えに声をあげた。


「何? 待たないよ。
 戻ったら、また1からやり直しになるかもしれないのに。
 俺、恋人にして貰うまで、1年半口説き続けたんだよ?
 そこから半年かけて同棲まで、やっとこぎ着けたのに」
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