やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 これから! の時に待ったを掛けたせいか。
 さっきまでの甘さを捨てた言葉は子供のように自己都合ばかり。
 なのに、確かにこのひとは初めての私を気遣って、ずっと大切に扱ってくれた。


 どちらの唾液か分からないけれど、親指の腹で濡れた唇を拭った姿の色気が凄くて、目の前がくらくらした。

 え、こんな人に1年半もかけて口説かれた?
 それまでよく堕ちなかったな、鉄の女か、将来の私。
 今の私は会ってその場で、この為体なのに。


 でも、このまま……いくら恋人になる? ひとであっても。
 流されるように関係を持つのは嫌だ。
 離れて欲しい、と彼の胸を押した。

 口では強引なことを言っていたのに、思っていたより素直に彼は退いてくれた。
 私は慌てて、ボタンをはめ、上体を起こした。
 腰から外れていたバスタオルを巻き直して、カウチから離れていく彼の呟きが聞こえた。


「他に男が……」



 自分から止めて、と頼んだのに、離れられると寂しくなった。
 そんな自分に言い聞かせるように。


「絶対にこの先には進まない。
 貴方の本当の名前さえ知らないのよ?
 これが貴方の最終形態なの?」

「最終?……あぁ、子供に魔女に続いての第3の。
 そうこれが最終形態だよ。
 本当の俺、オルシアナス・ヴィオン、23歳のね」


 10年後の私、29歳。

 ……6歳も年下の恋人!
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