花火と嫉妬と
暗闇の中、私と彼は手を繋いでいた。お互い人混みに攫われない様に。
 その時は突然に訪れ、ドンッという破裂音と共に空に大きな花が咲いた。
 さっきまで手を引いてくれていた彼の足が止まり、彼は花火に夢中になってしまった。
 その横顔は、まるで子供が燥ぐ様に愛らしく笑っていた。私は彼の目を奪う花火に思わず妬んでしまった。この感情は自然と行動に出ていた。
 繋いだままの彼の手を引き寄せ、大好きな彼に届くように少し背伸びをした。
 私を見てと言わんばかりに強引に唇を奪ってやった。
「綺麗でしょ」
私が照れながら微笑むと、彼はもっと照れた顔を空いた手で隠しながら言った。
「うん。綺麗だよ」
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