ナミダ花火
道を歩くと、カランコロンと下駄の音が響く。
時刻はもうすぐ19時になるというのに、夏の空はまだ明るい。
夏祭りの会場までは、家から歩いて15分ほどで着く。
たった15分の歩き慣れたはずの道のりが、なぜか今日はやけに遠く感じる。
そっか。去年までと違って、今日は隣に大地がいないから。
胸が少し苦しくなるのを感じながら歩いていると、会場が近づくにつれて周囲に人も増えてきた。
地元のお祭りと言ってもこの辺りでは歴史ある有名なお祭りだから、地元以外のお客さんも多い。
「ふぅ、着いたぁ」
会場に到着した私は、辺りを見回す。
神社へと続く通りには、今年もたくさんの出店が並んでいる。
毎年、大地と一緒にどちらがたくさん取れるか勝負していた金魚すくいの屋台。
美味しいと評判で、いつも行列のできるたこ焼き屋さん。
他にもわたあめにヨーヨー、かき氷などなど。
うーん。いつものことながら、こんなにたくさん出店があると、どれにしようか迷っちゃうな。
だけど、私はやっぱり……。
「おじさん。これ、ひとつください」
「はいよ。400円ね」
私は、りんご飴を購入した。