ナミダ花火


──今から4ヶ月前。


校庭の桜の蕾が膨らみ、開花があと少しに迫った3月中旬。


どこまでも晴れ渡るこの日は、中学校の卒業式だ。


式典と最後のホームルームが終わり、卒業証書とカバンを手に、私は学校から家までの道をひとり歩いていた。


「おーい、鈴華ーっ! 待てよ」

「……」

「おい、おすず!」

「……その呼び方はやめて!」


私が振り返ると、そこには同じく卒業証書を手にした学ラン姿の大地が立っていた。


「さっきから呼んでるのに、お前がなかなか返事しないからだろ?」


走ってきてくれたのか、大地の息が少し乱れている。


「それで? 何か用なの大地」

「あのなぁ、今日は俺と一緒に帰ろうって言ってたのに。なんで先に帰ってんだよ?」

「え、そうだったっけ?」


本当は昨日、大地と一緒に帰ろうって話していたことは覚えていたけど。

忘れたフリをして、私は大地からふいっと顔をそらす。


「あー! もしかして鈴華、お前泣いてた?」


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