沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
現在
ちょうど一年前。
二人だけで乗った観覧車の中。
『来年も一緒に 花火を見ような』
恥ずかしそうに微笑んでくれた東条くん。
彼氏ではない。
女子嫌いで有名な、ただの同級生。
野いちご学園・高等部の生徒会長で。
暴走族の歴代最強・総長様。
一年に一度しかない、遊園地の夏祭り。
私なんかが彼の隣を独占して、本当にいいのかな?
心配になりながらも、高嶺のワイルド王子様と一緒に花火を見た。
お互いほとんど話さなかったけれど、夢のような時間だった。
彼の隣に座っているだけで、心臓が暴れ出して。
甘いキュンキュンで、心臓が休まらなくて。
ドキドキで自分が倒れないか、心配になるほどで。
でも残念ながら、本当に幻想だったんだ。
私が東条くんの隣にいられたのは、その一夜だけだったから。
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