沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
「高波さんにフラれた時点で、あいつは姫じゃなくなってる。ワガママすぎるわ男癖が悪いわで、チーム内でもめまくって。俺が百目鬼から追い出した」
「そうだったんだ。ごめんなさい。お姫様の言葉をうのみにして、勝手に勘違いして」
「姫野のせいじゃない」
「東条くんに聞けばよかったよね。でも怖かったんだ。暴走族のお姫様が好きって、面と向かって言われたらどうしようって……」
「姫野、俺に言ったよな? 大事な人がいるって。そいつと付き合ってるんじゃないの?」
なんでカップル大歓迎の花火大会に、今夜、一人で来たんだよ?
「……付き合ってる人なんかいないよ。大事な人っていうのは、歩のことだから」
「姫野の弟?」
「沙理奈さんに言われたんだ。東条くんと関わったら、歩がどうなるかわからないって」
「マジで?」
「私のせいで歩が痛い思いをするのは、絶対に避けたくて」