沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
「私……反対側の景色も見たいなぁ……」
キュンキュンに耐えられなくなって、逃げ出そうと試みたものの
「姫野の視界、ふさいでもいい?」
切ない声が響いた直後
隣に座る東条くんに、抱きしめられちゃった。
私の顔面は、きつく東条くんの胸に押し当てられている。
だからそういうの……
急に甘い態度は、ダメだってば……
大事そうに抱きしめられたら、心臓が震えて余計に言えなくなっちゃう。
『東条君のことが大好きだよ』って。
浴衣の袖から伸びる男らしい腕が、力強く私を締め付けてくるのに
「姫野に嫌われたって……俺は絶望してたんだからな……」
なんで弱々しい声で囁くかなぁ。
そのギャップ……反則だよ。