沼甘総長は、左手の薬指を独占したい


東条くんが座席から立ち上がった。

そのまま私の前に。



「ほんと可愛い」


私の髪を撫でながら微笑むと、観覧車の床に片膝をついた。



まるで童話のから飛び出した、ワイルドな王子様。

お姫様にプロポーズするあのシーンを、再現しているかのよう。




「これが俺の気持ち」



東条くんの手には、赤いヨーヨーが。

真剣な顔で、私の左手の薬指にヨーヨーの輪っかを通していく。



「これって……?」


「指輪の代わり」



わけもわからず、ドキドキに襲われている私。


東条くんは私の左手の薬指に

今度は唇を押し当ててきた。
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