沼甘総長は、左手の薬指を独占したい


すぐに唇が離れてくれた。

良かったぁ。


温もりもさっと消え、私はホッとしたものの……



「これじゃあ、俺の愛は刻めないよな」



もう一回と言わんばかりに、左手の薬指に唇を押し当ててきたんだもん。



強く吸われて

それが何秒も続いて

甘さを感じているのは指なのに、もう無理ってなっちゃって


「ひぃあぁぁぁぁ!」


キスをされ続けた手を、私は勢いよく引っこ抜いちゃった。





「ったく、恥ずかしがり屋だな」



私を引き寄せるように、強引に抱きしめないで。



「俺から逃げるな」



ものすごーく甘い命令声を、私の耳に吹きかけないで。



「俺は一生、姫野を逃がす気はないからな」



耳が溶けそう。


心臓……とろけそう……


< 113 / 115 >

この作品をシェア

pagetop