沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
かすかな期待なんかしたら、恋に傷つく残酷な未来がやってきちゃうのにね。
今夜、東条くんは夏祭りに来ない。
私に会いに来るはずがない。
わかってはいる。
わかっていはいるけど……
夜の遊園地。
ベンチに座りながら、私は薄暗い園内をキョロキョロキョロ。
泣きそうな瞳で、彼を探してしまうんだ。
私の指から垂れる赤いヨーヨー。
さっき露店で釣ったもの。
悲しみをごまかしたくて、私は手のひらでポンポン叩く。
惨めな感情をごまかしてくれる。
今の私にとって必須アイテム。
ではあるけれど……
このヨーヨーのせいかもしれない。
一年前に終わった恋が、今でも忘れられないのは。
私は瞳を閉じた。
遊園地のベンチに座ったままで。
色鮮やかな花火の残像がかすめる脳内スクリーンに、1年前の甘苦い出来事を映し出す。