沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
一年前
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あれは私が高校2年生の時。
明日から夏休み突入という日の、お昼休みのこと。
私・姫野結衣花は、教室でお弁当を食べていた。
気持ちいいほどストレートにものを言う、親友の篠原亜寿美ちゃんと一緒に。
向かいに座るアズちゃんに、得意げにスマホの画面を突き出した私。
アズちゃんは私の嬉しさを受け止めるように、にんまり笑顔を浮かべている。
「アズちゃん、見て見て」
「浴衣じゃん。結衣花、ついに買ったの?」
「バイト代が、やっとたまったんだよ」
「可愛い系の浴衣が欲しいって、去年から言ってたもんね」