沼甘総長は、左手の薬指を独占したい


……っ。


不安すぎて胃が痛むことが、もう一つだけあるんだった。



高校に着いて、東条くんに会っちゃったらどうしよう。


彼の顔なんか見たら、私は泣いちゃいそう。

友達の前で泣くなんて、恥ずかしくて絶対に嫌だよ。




涙を拭いて、高校まで歩く。

友達になるべく会いたくなくて、生徒があまり通らない道を選んだ。


小道を抜け、やっと校門までたどり着いたのに。



なんで校門に立っているの?

門に背中を預けながら、腕を組ぐみをして。



私を待っているわけじゃないよね?



『暴走族の総長と姫』


東条くんには、固い絆で結ばれた最愛の人がいるって聞いたよ。


じゃあ私の存在は……

一体……





道路の反対側に立つ、私を見つけた東条くん。



フッと頬を緩ませて

ワイルドに波打つ髪をかきあげながら

私の方に走り出したけど……



お願い。


今、私に近寄らないで。


また泣いちゃうから。

失恋の悲しみで、涙が止まらなくなっちゃうから。



お願いだよ……東条くん。



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