沼甘総長は、左手の薬指を独占したい


「最近、彼氏ができたって子がいてね。どうしても花火大会に彼と行きたいんだって」


「その子の代わりに、結衣花がバイトに出てあげるってことね」


「うん」



「はぁぁぁぁ、もう。結衣花は、お人よしすぎでしょうが!」



だってだって……



「人生初の彼氏ができたって、嬉しそうに報告されたんだもん。花火大会で思い出を作りたいって言われたら、協力してあげたくなるでしょ?」



さやちゃん達に話したら「バイトならしょうがないね」って、わかってくれたし。



「結衣花って、優しすぎて損するタイプだよね」と、心配顔で眉を下げたアズちゃんだったけれど


「まぁ結衣花のそういうとこが大好きだから、私は結衣花の親友っていう特等席を独占してるんだけど」


微笑みながらうんうん頷いて、私の腕をさすってくれた。




私も大好きだよ。

人の心配ばかりで、自分の幸せは後回し。

私が悲しんでいると、彼氏さんとの約束をすっぽかして私を慰めてくれる。

心優しい、大親友のアズちゃんのことを。


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