沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
「……姫野、おはよ」
「……おはよう」
東条くんの声は、たどたどしい。
私と目を合わせないように、視線を足元に落としている。
東条くんには彼女がいる。
これ以上関わったら、弟の歩が何かされちゃうかもしれない。
はぁぁぁぁぁ~
夏休みの間、ずっと会いたかった。
凛としたワイルドボイスを、聞きたくてたまらなかった。
あんなに待ち焦がれていた再会なのに……
心臓が痛い。痛すぎる。
張り裂けそうなくらいズキズキって。
東条くんと繋がった縁。
切らなきゃいけないんだ。
私が今ここで。
勇気を出して、思い切りズバッと。