沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
「あのさ姫野……今度の日曜日って……」
「東条くん、ごめんなさい!」
「ん?」
「もう私に、話しかけないで!」
「えっ? いきなり、なんで?」
それは……
「大事な人が……いるから……」
本当に大好きなの。
絶対に守りたいの。
弟の歩のこと。
「東条くんにも、いるんでしょ?」
噂で聞いたことがあるよ。
暴走族の総長は、『姫』を命がけで守るものだって。
総長の最愛の人しか、暴走族の姫になれないってことも。
私を騙すなんて、今でも思えないけれど。
東条くんのこと、信じられなくなっちゃった。
彼女がいるのに、どうして遊園地の花火大会に私を誘ったの?