沼甘総長は、左手の薬指を独占したい


「あのさ姫野……今度の日曜日って……」


「東条くん、ごめんなさい!」


「ん?」


「もう私に、話しかけないで!」


「えっ? いきなり、なんで?」



それは……



「大事な人が……いるから……」



本当に大好きなの。

絶対に守りたいの。

弟の歩のこと。




「東条くんにも、いるんでしょ?」



噂で聞いたことがあるよ。


暴走族の総長は、『姫』を命がけで守るものだって。

総長の最愛の人しか、暴走族の姫になれないってことも。



私を騙すなんて、今でも思えないけれど。

東条くんのこと、信じられなくなっちゃった。



彼女がいるのに、どうして遊園地の花火大会に私を誘ったの?

< 71 / 115 >

この作品をシェア

pagetop