沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
『俺をオスって意識してくれてるわけ? マジで可愛い』
『閉園時間まで、姫野をこの遊園地に閉じ込めてもいい?』
『来年も一緒に 花火見ような』
照れながら甘く囁いてくれた、あの言葉。
全部、嘘だった?
二人の間に、沈黙の時間が流れる。
東条くんは今、どんな顔をしているんだろう?
私は今、涙がこぼれそうで。
東条くんともっと一緒にいたいと思えば思うほど、涙腺が緩みだしちゃって。
泣きそうな顔なんて見られたくなくて、私は顔を上げることができない。
「あっそっ」
うつむく私の頭上に降ってきた、私に幻滅したような低い声。
「大事な人? なんだよ、それ」
東条くんは怒りの溜息をこぼすと
「安心して。もう二度と、姫野に話しかけないから」
道路を渡って、校門の方に歩いて行ってしまった。