沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
ベンチに座り、花火を見上げる。
惨めだなぁ。
カップルだらけの夜の遊園地に、一人で来ているなんて。
淋しさを紛らわしたくて、真っ赤なヨーヨーをポンポンポン。
さっき一人で釣ったもの。
去年、東条くんが釣ってくれた時には、ピンクと赤のヨーヨーが、触れ合いながら仲良さそうに揺れていた。
幸せな時間を思い出すと、涙が出てきちゃう。
孤独に耐えながら花火を見つめ続けられるほど、私のメンタルは強くないのに。
一年前に繋いでくれた
彼の手のぬくもりを思い出しながら
「私の涙腺、もろすぎだよ……
もう帰ろう……」
涙を浴衣の袖で拭い、立ち上がったのに
えっ?
うそ!
私の足は動かなくなっちゃった。
なんでいるの?
真っ赤な浴衣を着て。
ねぇ、教えてよ。
……東条くん。