沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
現在
朝都side
☆朝都side☆
「ちょっと来て」
俺は姫野の腕を掴む。
「東条くん、なんでここに?」
涙で潤む瞳で見上げられても、俺は腕を離さない。
無表情のまま、姫野を強引にひっ張っていく。
『遊園地の夏祭りに、姫野がいるはずがない』
『俺との約束なんて、どうでもいいと思ってるはず』
そう思いながらも、俺は今夜、遊園地に来た。
一年前、俺は姫野にフラれた。
夏休み明けの始業式の日。
好きな女に会いたくてたまらなくて、朝早くから待ち続けていた校門の近くで。
『もう私に、話しかけないで』
『大事な人が……いるから……』
大好きな女の口から飛んできたのは、残酷な言葉だった。