沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
ショックだったよ。
夏休みの間ずっと
『姫野は俺のことが好き。
そういうことでいいんだよな?』
俺が勝手に思い込んで、浮かれまくっていたせいなんだけど……
姫野の声が聞きたくて。
でも連絡先は知らなくて。
教えておいた俺のスマホの番号に、電話をかけて来て欲しい。
俺は願うことしかできなかった。
『東条くん、会いたいよ』
電話越し、淋しい声で姫野にお願いをされたら
『ちょっと待ってろ』
急いでバイクにまたがって
オマエの心を独占しに行くのに。
そんな甘い妄想に浸ってた俺。
それなのに振られた。
夏休みあけの朝一で。
残酷に。
ズバッと。
振られた過去を思い出すのはやめよう。
今夜は年に一度の遊園地の夏祭り。
俺を嫌いな姫野の手首を掴んで
二人だけになれる場所に
連れ去っている最中だから。