沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
俺は無理やり、姫野を観覧車に押し込んだ。
好きな奴がいるなら、俺との約束なんてすっぽかせよ。
俺色のヨーヨーを大事そうに抱えてんなよ。
ぶつけたい怒りを、ぐっと腹に押しとどめて。
未だ俺の顔が引きつったままなのは、姫野の感情が読めないからで。
俺を見つめる姫野が、怯えるように恐怖でオロオロと瞳を揺らしていて。
襲われそうな小動物みたいな目で、俺を見上げるな。
可愛すぎるだろうが。
怯える姫野さえも愛おしく感じる、情けない自分に
この女にはまりすぎ……と
自分の腹に一発パンチを食い込ませたくてたまらない。
俺は姫野を観覧車の奥まで追い込むと、ガンと両方の拳で窓を叩いた。
観覧車の窓と俺に挟まれている姫野に、鋭い瞳を突き刺す。