沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
「結衣花、バイト代で浴衣のほかに何か買ったの?」
「弟のお弁当箱くらいかな?」
「歩くんの? 自分のじゃなくて?」
「歩ってほんと可愛いくて。小1なのに、まだ戦隊ヒーローが好きなんだよ。そのお弁当箱がどうしても欲しいってお願いされちゃって。上目遣いで、お姉ちゃんお願いって目をウルウルされちゃって……」
「キュートな真ん丸お目目の天使に、心を掴まれちゃったわけだ」
「気づいたら、レジでお金を払ってた」
「お財布を開く前に、弟君に毒されてるって気づこうね」
「歩は飛び跳ねての大喜びだったし。大事にする、お姉ちゃんありがとうって、ほっぺをすりすりしてくるし。私も幸せな気分になれたからいいの」
「可愛い弟を思い出して、幸せそうにニマニマされちゃったら、これ以上は結衣花に突っ込めないよなぁ」
「結衣花のブラコンハッピー脳なとこも、マジで沼」と追加し、ニヒヒと笑うアズちゃん。
私も負けじと、冗談をかぶせる。