沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
日曜日の遊園地で。
校内で密かに人気がある姫野が、俺の視界に写っているこの状況。
階段のように一列ずつ高くなっている客席に座る姫野は
ふんわり波打つ長い髪を耳にかけ、パンフレットを眺めている。
隣には、野球帽をかぶった男子。
小夜より顔ができあがってるから、小1くらいか?
ふ~ん。
姫野も弟のお守かよ。
マジでお気の毒。
ヒーローショーなんて見ずに、今すぐ帰りたいよな?
同じ立場だし、ちょっとは姫野に同情してやるけど。
そう思っていたのに……
「お姉ちゃん、もうすぐ始まるね」
「歩、楽しみだねぇ~ 誰が一番最初に飛び出してくると思う? レッドかな? ピンクかな? 怪獣かな?」
「お姉ちゃん、はしゃぎすぎ。僕が恥ずかしくなっちゃう」
「ごめん、ごめん」
あれ?
こいつ、弟より浮かれてないか?
キョトン顔で、俺は首をかしげてしまった。