沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
ショーが始まっても
「歩、今の見た? レッドの回し蹴り、すっごくカッコよかったよね~」
戦闘シーンを見て、目をキラキラさせまくっていて
「がんばれ~」
子供たち以上に声を張り上げ、ヒーローを応援していて
……変な女。
表情がコロコロ変わるし。
なんか、見ていて飽きないなぁ。
俺は珍しく口角を上げ
ショーの間、姫野ばっかり瞳に映していたんだ。
これは恋愛感情ではない。
俺の周りにいないタイプで。
面白くて。
なんか目が離せなないだけ。
そう思っていたんだけど……
その時にはすでに、浸かっていたらしい。
弟に笑顔を向ける、姫野のスマイル沼に。
俺の片足がズズズっと。