沼甘総長は、左手の薬指を独占したい
「はい総長。遊園地でやる夏祭りのチラシ。これもって姫野さん口説いてきて」
えっ? 今?
教室の中に野次馬ウジャウジャな、この状況で?
「簡単に言うなよ」
俺にも心の準備ってもんが……
「他の男に取られてもしらないよ。ほら見て見て」
「教室の中?」
「姫野さんに声かけようか悩んでる男子、総長だけじゃないよ」
うわっ、マジか。
あいつより先に、姫野を誘わないと。
「壮太、本当にいいわけ?」
かなり本気で、姫野を狙ってたよな?
「こういう時しか、総長を支配できないし。交換条件をつけちゃおっと」
「女がらみはやめろよ」
「夏休み中に、俺の失恋ツーリングに付き合って」
フッ、そんなことでいいのかよ。
相変わらず優しい奴。