スパダリ煎茶家は、かりそめ令嬢を溺愛包囲して娶りたい。
「わざわざありがとうございます」
「気にしないでください。由良乃に来る前に書いていただきたい書類がありますのでお邪魔してもよろしいでしょうか」
「あ、はい。大丈夫です」
お店にまだある椅子に座ると「こちらです」と書類を手渡した。
「養子縁組届……?」
「はい。由良乃にて暮らすにあたって、養子縁組をします。養子縁組をしてもあなたの両親は、菊亭昂と菊亭さくらなので安心してください」
「わかりました……」
お祖母様の名前もあるし、これも拒否権はないんだろうと思ったので私は和成さんからボールペンを受け取り名前を書いた。ここに名前を書いたら私は、もう菊亭ではなくなるんだな……私は、由良乃千愛になるんだなぁと考えて寂しさを覚える。
「書きました。確認をお願いします」
私がそう言うと彼は一通り見て「大丈夫です、ありがとうございます」と言ってくれたので安堵する。そして印鑑を押せば、彼はそこにあてがみをして封筒にしまった。
そうして私は、和成さんとともにこの家を出た。